乳牛におけるクレアチニンをインデックスに用いた尿中カリウム排泄日量の推定法の確立

 わが国では牧草中のカリウム含量が高く、乳牛がカリウムを過剰摂取しやすい。カリウムの過剰摂取は、乳熱や乳房浮腫、グラステタニーを引き起こす要因となるだけでなく、尿量の増加や堆肥中のカリウム過多をも引き起こす。
 このことから、乳牛のカリウム過剰摂取を把握することは疾病予防や排泄物の低減に役立つと考えられる。そこで、カリウム摂取量と高い相関のある1日の尿中カリウム排泄量を、部分尿から推定する方法を確立した。
 部分尿による1日の尿中カリウム排泄量の推定には、インデックスとして尿中クレアチニンを利用した。尿中に排泄される1日のクレアチニン量は乳牛において個体や時期による影響を受けることなくほぼ一定の値であり、乾乳牛では1日に尿中へ排泄されるクレアチニン量は体重1kg当たり平均22.8mgであった。
 さらに、6時間間隔で採取した尿を部分尿とした場合、部分尿のカリウムとクレアチニンの濃度比は尿中カリウム排泄量(mg/h・kgBW)との間に高い相関関係(r=0.952,P<0.01)が認められるとともに、部分尿中のカリウムとクレアチニンの濃度比は一日をとおしてほぼ一定であることを明らかにした。
 このことから、以下に示した推定式により1日の尿中カリウム排泄量が推定できると考え、6時間尿を部分尿として推定した結果、実測値との間に高い相関関係(r=0.910,P<0.01)が認められた。
 以上から部分尿より1日の尿中カリウム排泄量を推定できることが示された。

  推定式:尿中カリウム排泄日量(mg/day)=22.8(mg/day・kgBW)×体重
             ×部分尿のカリウム濃度(mg/dl)/クレアチニン濃度(mg/dl)

@特許公開
   特願2004-251670「尿中カリウム排泄量の定量方法及び定量装置」

関係論文発表等
@論文発表
・Estimation of dairy urinary potassium excretion using urinary creatinine as an index
 substance in prepartum dairy cows. Hideki Asai, Noboru Hayashi, Naoharu Takai,
 Yoshihisa Yoshimura, Yutaka Nakamura, Hiroomi Yokota and Kazumi Kita.
 Animal Science Journal.(76巻 1号掲載予定)

A口頭発表
・乾乳牛のスポット尿による尿中カリウム排泄量の推定(2003)日本草地学会第58回発表会
・乳牛におけるクレアチニンをインデックスとしたスポット尿による尿中窒素成分量の推定
 (2003 )日本畜産学会第101回大会
・スポット尿による1日の尿中窒素及びカリウム排泄量と摂取量の関係(2004)日本畜産学会
 第103回大会

 
 この研究を行った当部浅井英樹主任研究員に東海畜産学会より東海畜産学会賞が授与されました。
 授賞式は、平成16年11月16日に開催された平成16年度東海畜産学会秋季大会で行われました。
 
 表彰盾
                         
               

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 スポット尿による尿中カリウム排泄量の簡易測定法の開発