移行期の蛋白質水準が初産牛の産乳と繁殖に及ぼす影響 |
1.はじめに
近年、分娩前後の管理において、分娩前3週間から移行期の飼養管理が
重要とされ、各種検討が行われていますが、初産牛を用いた試験は少ない
状況です。
初産牛の分娩前は育成後期とも重なり、移行期には母体の増体と胎児の
急成長が起こるため養分要求量の増加が大きく、この時期の栄養管理の
適否が分娩後の産乳成績や繁殖性などに及ぼす影響は大きいと考えられます。
そこで本研究では移行期の蛋白質給与水準が初産牛の産乳と繁殖について、
当研究所及び全国10府県・研究機関による共同試験した結果概要を報告します。
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2.材料及び方法
・供試牛は、10場所で飼養されているホルスタ
イン種初産牛70頭 で秋以降冬に分娩するも を用い、平成13年9月から平成15年 6月の 2ケ年間において調査しました。 ・分娩前期は分娩前 9wから3w前までとし、
CP含量12.3%の ものを日本飼養標準の充足 率100%で給与しました。 移行期は分娩予定 3w前から分娩までとし高CP区はCP含量を 15.1%のものを日本飼養標準の充足率120% で給与し、低CP区 はCP含量12.9%のものを 充足率100%で給与する2区 を試験区として設 定しました。 |
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・泌乳期は分娩5日目から分娩後14wまでとし
CP含量17.6%のものを自由採食としました。 ・調査項目としては、体重、飼料摂取量、産乳
成績とし、繁殖成績につては分娩後20週まで 調査しました。 |
3.試験の結果 @)CP充足率は分娩前期では90から95%、移行期は低CP区93%と高CP区113%でした。 移行期のCP水準は、設定通りになりませんでしたが、両区の差は当初予定した20%でし た。 A)泌乳期の飼養成績は、体重及び飼料摂取量に両区に差はありませんでした。増体指数( 体重を分娩時体重で割って体重の回復度合いの指標とした)は、 全期間の平均は低CP区 97%に対し高CP区95%で高CP区の体重の回復が遅れる傾向にありました。 B)平均乳量は高CP区の方が低CP区よりも1.5kgほど多い傾向に あり、試験期間を通して低 CP区よりも高CP区の方が高く推移しました。乳成分については差は小さいものでした。 C)発情回帰日数、初回授精日数、授精回数に差はありませんでしたが、受胎まで の日数は 高CP区で延びましたが、受胎までの日数は推奨される100日以下でした。産子体重は低C P区40kg、高CP区42kgと高CP区が2kg大きい傾向にありました。 |
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4.まとめ
初産牛における移行期の蛋白質給与レベルの異なる2つの区について試験した結果、乳量が高CP区29.6sに対して低CP区28.1sで高CP区が高い傾向にありました。繁殖成績は、受胎までの日数は高CP区で延び たが受胎率には差が認められませんでした。 以上のことから、初産牛ではNRC飼養標準の飼料中CP推奨値15%に近い高CP区において、産乳性と繁殖性について比較的バランスのとれた結果が得られました。ただし、移行期の蛋白質給与水準を高めると乳量の増加が見込まれますが、受胎までの日数の改善についても今後検討する余地があるものと考えます。 |
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この成果は、全国10場所協定研究によるものです。 参加県・機関は、茨城県(主査)、宮城県、福島県、埼玉県、静岡県、京都府、岐阜県、 鳥取県、熊本県、全国酪農業協同組合連合会及び独立行政法人農業技術研究機構 畜産草地研究所です。 |
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