岐阜県畜産研究所飛騨牛研究部

研究内容

受精卵移植

 当研究所では、和牛の改良・増殖を効率的に進めるため、受精卵移植技術に関連した研究に取り組んでいます。

<FSHの1回投与による過剰排卵誘起に関する研究>
 黒毛和種の過剰排卵誘起は、生理食塩水に溶解した総量18〜24AUの卵胞刺激ホルモン(FSH)を3〜4日間にわたり筋肉内に漸減投与する方法が主流となっています。しかしこの方法では、牛に与えるストレスが大きいうえ、ホルモン処理も煩雑であるため、過剰排卵処理法の簡易化が求められています。
 そこで、当研究所ではFSHの吸着能が高く、徐放性を有する水酸化アルミニウムゲルを用いたFSHの1回投与による過剰排卵誘起法に関する研究を行っており、これまでの漸減投与法との採卵成績の比較、用いるFSHの量などについて検討しています。

<受精卵段階での遺伝子診断に関する研究>
 受精卵の段階で、性、遺伝病、経済形質に関連した遺伝子の有無など、遺伝子診断ができれば望ましい形質を持った和牛の生産が効率的に行うことができます。受精卵段階での遺伝子診断には、受精卵から細胞の一部を切り取り診断用のサンプルとして使用しますが、診断したい項目が多岐にわたるほど多くの細胞が必要となるため、切り取った細胞を体外で効率的に増殖させる方法について検討しています。

<核移植技術の確立と応用に関する研究>
 核移植技術は、遺伝的に同一な個体を多数生産できる技術であり、畜産分野でも改良・増殖の効率化、飼養試験の精度向上などを図ることのできる技術として期待が寄せられています。この技術を和牛の改良増殖へ利用していくため、生産性の高い核移植技術、体細胞クローン牛の正常性、核移植技術を利用した種雄牛造成システム等に関する研究を進めています。

核移植の流れについての関連ホームページ http://www.biotech-house.jp/

<受精卵移植を利用した高育種価牛の生産>
 和牛改良の効率化を図るため、県内高育種価牛からの採卵、および得られた受精卵の移植を関係者の方々にご協力いただき実施しています。得られた産子は畜産研究所に引き取り、種雄牛候補牛、および当所繁殖センターの繁殖牛として飼養されています。

FSHの1回投与による過剰排卵誘起に関する研究

ワンショット法(FSH25AU)で過剰排卵誘起 した雌牛から得られた受精卵。

受精卵段階での遺伝子診断に関する研究

ヘルニア法によるサンプリング

培養した栄養膜細胞

核移植技術の確立と応用に関する研究

ガラスで作成した針や、電極をマイクロマニピュレーターで操作し、核移植を行います。

左上:透明帯の切開

右上:卵子核の押し出し

左下:ドナー細胞の導入

右下:融合処理

「飛騨白清」の母「第8はくさん」の体細胞を核移植することにより生産された「みれにあむひだ」

受精卵移植を利用した高育種価牛の生産

受精卵移植により生産された平成17年度直接検定牛「泉安福の3」(平成17年5年3月生)