岐阜県畜産研究所飛騨牛研究部

研究内容

ロシア共同マンモス復元プロジェクト

  はるか1万年前に絶滅したマンモスを復活させる。そんな夢のような計画が、宮崎市に本部のあるマンモス復活協会が中心となって開始されました。
 現在では、顕微授精の世界的権威である近畿大学生物理工学部 入谷 明教授のグループが加わり、岐阜県もこれを支援しています。

 ○マンモスを復活させる2つの方法

 マンモスを復活させる方法としては2つの方法が検討されています。
 一つ目は顕微授精技術を利用した方法です。この方法は、永久凍土中で冷凍されたマンモスの精子を、現代の雌ゾウの卵子に顕微授精して50%雑種のマンモスを誕生させます。これで雌が生まれれば、再びその卵子にマンモスの精子を顕微授精し、75%マンモスを作出します。これを繰り返すことにより100%マンモスに近い動物を誕生させる方法です。しかしこの方法では、例えうまくいったとしても数十年の歳月が必要で実用的ではありません。
 もう一つの方法は、体細胞クローン技術を利用した方法です。この方法では、マンモスの凍結死体からDNAが状態よく保存された細胞を取り出し、体細胞クローン技術により胚を発生させ、雌ゾウの子宮に移植することによりマンモスを誕生させる方法です。この方法では、1世代でほぼ100%のマンモスが再生できるため、ロシア連邦、近畿大学、岐阜県の共同研究では、こちらの方法により、マンモスの復活を目指しています。

 ○シベリアにおけるマンモス探査

 永久凍土には、マンモスや毛サイなどが今でも数多く眠っていると考えられています。凍土が解ける夏場(7月上旬から8月下旬)には多くの古代生物の骨や遺体が発見されており、過去にシベリアでは1900年にコリマ川の川岸で「ベレゾフスカマンモス」の遺体が、また1977年にはほぼ完全な形で赤ん坊マンモス「ディーマ」の遺体が発見されています。しかし、残念ながらDNAを正常に残した精子や細胞の冷凍保存は行われていませんでした。
 そこで、マンモス復活へ向けての第一歩として、岐阜県、近畿大学、モスクワの国際科学技術センターの共同プロジェクトとして2002年8月1日〜7日に実施した永久凍土の発掘調査の中で、未利用微生物の調査とともにマンモス探査を実施しました。
 調査はサハ共和国ヤクーツク市から北へ1,200kmの北緯72度の北極圏を流れるマクスノーハ河周辺で行われました。
 探査の結果、肉片の付着した右前脚と左後脚2本の他、上腕骨、骨盤、せき髄などが多数発見されました。これらは骨の大きさなどからマンモスのものである可能性が非常に高いと考えられています。
 発掘された標本の一部は、2003年7月に近畿大学先端技術総合研究所に搬入され、現在DNAを解析中ですが、標本がマンモス由来のものであると確定されることに期待が寄せられています。

発掘地点

ヤクーツク市から北へ約1,200kmの地点

ヤクーツク→デプタトスキー間は飛行機で、
デプタトスキー→マクスノーハ(発掘地点)間は大型ヘリで移動

マンモス復元方法の説明

体細胞クローン技術を用いたマンモスの復元方法です。

太古のままの姿で蛇行するマクスノーハ河

発掘現場はこの写真の手前付近。

永久凍土からのマンモス発掘風景

非常に固い凍土から、傷を付けないように高圧放水により慎重に掘り出しました。

発掘された脚と大腿骨

脚はブロンドの体毛に覆われ、筋肉および皮膚がほぼ完全な状態で付着していました。

その他の発掘物

椎間板や肋骨などが発掘されました。

地平線をゆっくりと移動するカリブーの群

心が洗われるような風景です。

七色の光を発して沈む夕日

シベリアの夏は白夜で、暗黒の夜はありません。(撮影時PM24:00頃)

発掘調査隊のメンバー

大きな成果を収め、キャンプを撤収してくつろいでいます。

下段左から2人目:当所 大谷所長
上段右より2人目:近畿大学 加藤講師